aim10x Digital 2026 消費財セクターの要点:需要変化をいち早く察知し、バリューチェーン全体で意思決定の足並みを揃え競合優位性を獲得

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弊社が2026年3月18日に開催したオンラインイベント『aim10x Digital』にて、当社のエグゼクティブ・チェアマン兼共同創業者兼CEOチャクリ・ゴッテムカラが、VUCA時代に対応する新たなオペレーティングモデル「APEX」を提示した後、ビッセル社、ペルフェッティ・ヴァン・メレ社、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)社をはじめとする消費財メーカーのリーダーたちが登壇し、この新たな現実に勝ち抜くためのオペレーティングモデルをどのように再設計しているかを共有しました。
共通していたメッセージは明確です。現代の消費財企業における優位性は、需要予測精度を向上させるだけでは生まれません。需要の変化をいち早く察知し、バリューチェーン全体の意思決定をリアルタイムで連携させ、複雑さを増すグローバルネットワーク全体で精度高く実行する力こそが鍵となります。
本記事では、各セッションから得られた重要な示唆をまとめます。aim10x Digitalの他の業界別セッションのポイントもあわせてご覧ください。
また、ぜひ他の業界別セッションのまとめ記事も併せてご覧ください。
- 基調講演の要点:新たなオペレーティングモデルの台頭~リーダーがいま備えるべき変革の指針~
- 小売セクターの要点:個別最適ではなく、組織横断での全社的意思決定の重要性
- 製造セクターの要点:エンドツーエンドの統合計画を追求し、絶えず察知・学習・適応し続ける力
ビッセル社:在庫管理・計画・意思決定の構造的変革
ビッセル社は在庫を約10%削減し、数百万ドル規模の運転資本を解放しながら、充足率の改善、チャージバックの削減、地域間輸送・緊急輸送コストの低減を同時に実現しました。かつて何週間もかかっていたシナリオ分析は数時間以内に完了できるようになり、変動局面においても全社的な意思決定を迅速に下せる体制が整っています。
しかしこの水準に達するには、オペレーティングモデルの大幅な変革が必要でした。ビッセル社のサプライチェーンエグゼクティブ、リンジー・リー氏がコロナ禍の真っ只中に入社した当時、組織は分断された状態で混乱に対処していました。「部品不足に直面する一方で、売上拡大のチャンスもありましたが、組織は極めて断片化されていた」とリー氏は振り返ります。営業チームは各顧客に合わせた最適化を図り、各リージョンは独自の増益計画を立て、アナリストはシナリオ構築に2〜3週間を費やしていました。
この悪循環を断ち切るため、同社はo9との協業を決断し、単なる個別課題の解決策(ポイントソリューション)ではなくエンドツーエンドのスコープにこだわりました。目標は「サプライヤーの状況まで踏み込み、部品レベルでの在庫管理と制約管理を行い、すべての計画プロセスを統合する」こと、そして何より例外管理を軸にシナリオ分析を効率的に実行することでした。約6カ月間にわたる厳格なRFPプロセスを経て、リー氏は「私たちが求めていたエンドツーエンドのソリューションを提供できるのは、o9しかなかった」と結論付け、o9 デジタルブレインの導入を決めました。

MEIO(多段階在庫最適化)による在庫管理の変革
エンドツーエンドの変革が最も顕著に現れたのが在庫管理です。以前は「このSKUは4〜6週分の在庫を持とう」というような経験則に頼り、在庫は変動性に対する大まかなバッファとして機能していました。
MEIOの導入により、その考え方は一変しました。「非常にシンプルに言えば、システムに任せたのです」とリー氏は述べます。感情と勘を排除することを目標として目標サービスレベルを設定し、実際の変動性に基づいてシステムが最適化することで、安全在庫は実際の需給シグナルと動的に連動するようになりました。
その結果、リー氏が「魔法のような組み合わせ」と呼ぶ、在庫削減とサービスレベル向上を同時に達成。安全在庫は大幅に減少し、地域間輸送が減り、チャージバックが低下し、納期遵守率が改善したほか、在庫は大まかな設定から、データに基づく戦略的な投資へと進化しました。
現在、シナリオ計画は週次の標準業務となっています。主力SKUの金型制約のモデリングから関税対応の評価まで、チームは経営層にコスト上の影響、サービス上の影響、そして収益への影響という明確な選択肢として提示します。プランナーは受動的な分析から、能動的なインサイトの提供へとシフトし、データを信頼し、根拠ある意思決定ができるようになりました。
リー氏が語る変革の主な教訓
- 準備が整う前に動き出す:完璧を求めず、常に前進し、テストし、学びながら継続的改善を積み重ねることが重要です。
- 全社統一の情報基盤を作る:データが分断されていると企業にとって何が最も重要か判断することができません。唯一の情報源があってこそ、事実に基づいたトレードオフが可能になり、意思決定から感情を排除できます。
- システムに既存の固定観念を打破させる:「どんな変動にも4〜6週間の在庫で対応する」という慣習を変えるには、文化的変革が伴いました。一部のSKUでテストを行い、実績を積み上げることで、サービスレベルを上げながら安全在庫を下げられることを証明し、不確実性を競争優位へと転換しました。
ABインベブ社:90%のタッチレス予測実現への道
ABインベブ社は、o9 デジタルブレインの導入により予測精度を10%以上向上させ、在庫を25%近く削減。さらに、グローバル全体でのタッチレス予測率を65%まで引き上げ、一部の市場やモジュールでは70〜90%という驚異的な数値を叩き出しています。同社のグローバルサプライチェーン計画 バイスプレジデントのマイケル・クレス氏にとって、これらの成果は6年に及ぶ抜本的変革がもたらした必然の帰結です。
大手ビールメーカーとしての規模と複雑性を制御するには、従来とは一線を画すアプローチが不可欠でした。同社が追求したのは、需要、供給、原材料、在庫、そしてパッケージングに至る意思決定の連鎖を一気通貫で統合するシステムです。単なるツールの導入ではなく、計画プロセス全体の「エンドツーエンドの統合」を可能にするプラットフォームへの投資こそが、変革の核心でした。
2019年の変革着手以来、o9 デジタルブレインは20カ国以上、6大陸にわたる全生産量の90%以上に導入されました。しかし、真の成果はオペレーティングモデルそのものの進化にあります。プランナーは現在、プラットフォームを駆使し、革新的手法で複雑性を管理しています。クレス氏は「ビジネスの複雑性を掌握できる武器を手に入れたことで、将来予測の解像度が上がり、多角的なシナリオ比較を通じて意思決定を高度化できました」と語りました。

タッチレス予測を実現する設計の思想
ABインベブ社にとって、タッチレス予測への移行は、俊敏(Agile)、適応的(Adaptive)、そして自律的(Autonomous)なオペレーティングモデルを構築するための決定的なブレイクスルーでした。
クレス氏が率いるチームは、「いかにして初回から高品質な解を導き出すか」という一点に執念を燃やしました。プランナーがアウトプットの微調整に追われる状況を打破するため、データのクリーン化やパラメータの最適化、さらには熟練プランナーの知見をシステムに直接組み込むインプットの高度化へと注力ポイントを大胆にシフトさせたのです。
この転換が、プランナーの役割を根底から変革しました。プラットフォームへの信頼が深まるにつれ、意思決定の自動化が加速し、「アルゴリズムは十分に信頼に足る」という確信のもと、サプライネットワーク計画はすでに70〜80%、一部の市場の予測業務では80〜90%がタッチレスで稼働しています。
この変革により、プランナーは時間という貴重なリソースを手に入れました。プロモーションの最適化や新製品導入、あるいはアルゴリズムでは対処しきれない突発的な混乱への対応など、人間が関与すべき高付加価値な業務への専念を可能にします。クレス氏の言葉を借りれば、「プランナーの役割は単に計画を出力することではなく、計画を練ることです。
さらに、プロセスには継続的な学習サイクルが組み込まれています。事後分)を通じてプランナーの介入を評価し、その有効性が実証されれば、そのロジックをプラットフォームへと還流させ、システムの精度を磨き上げます。
クレス氏が提示する変革の教訓
- 完璧よりも前進を尊ぶ:行動へのバイアスを重視し、完璧主義が最善の敵になることを警戒すべきです。まずは稼働させ、運用しながら改善を積み重ねる姿勢こそが成功への近道となります。
- 変革は常にビジネス主導であるべき:最も優秀なプランナーにリーダーシップを委ねることが不可欠です。変革とはビジネス部門に与えられるものではなく、当事者自らが成し遂げるべきものだからです。
- 意思決定のプロセスで連携を具現化する:単なる言葉としての連携ではなく、実際の意思決定プロセスの中に他部門との連携を組み込むことが、真の組織的合意を生み出します。
ペルフェッティ・ヴァン・メレ社:断片化したIT環境の統合
断片化したIT環境を唯一の情報源へと統合することは、単なるバックオフィスの整理整頓ではなく、ビジネスの根幹に関わる経営課題です。統合に成功した企業は、迅速な意思決定、厳格な在庫管理、強固なサービスレベル、そして規律ある運転資本管理を実現します。一方、失敗した場合は一貫性のない指標やエクセルによる個別管理が定着し、誰の数字が正しいかを巡る終わりのない議論に終始することになります
チュッパチャップスやメントスでお馴染みのペルフェッティ・ヴァン・メレ社でグローバル・プロセスエクセレンス リードを務めるヒュース・ランゲンホイゼン氏は、なぜこの課題が過小評価され、失敗に終わることが多いのかを解説しました。複数の企業で長年変革の最前線に立ってきた同氏は、統合は技術的な贅沢ではなく、オペレーションパフォーマンスの根幹であると断言しました。

プラットフォームではなく「人」に焦点を当てる
核心にある問題は、取り組み方の枠組みにあると同氏は主張し、「統合をテクノロジー実装として捉えた瞬間、すでに間違った方向に進んでいます」と述べました。新システム導入によりシステム環境は大きく変えられるかもしれませんが、組織と人はそうではありません。「役割はゆっくりと変わり、習慣の変化には時間がかかり、信頼は何カ月もかけて築かれるか、あるいは失われていきます。」とランゲンホイゼン氏が述べるように、プラットフォームにだけ目を向けていると、統合ではなく、混乱を招くだけの結果に終わります。
この変革を実現するには、プロジェクト管理を超えた「翻訳者」としての役割が必要です。ランゲンホイゼン氏は自らの役割を翻訳者であり、会社のオペレーションを改善するために存在しているといいます。ビジネスとITの架け橋となり、両者が力を合わせて共通の目標を持ち、ビジネスとITが緊密に連携することで真の成果が生まれます。
ランゲンホイゼン氏が提示するビジネスとITの連携を実現するための教訓
- ミッションを再定義する:変革リーダーの仕事は、単にシステムを導入することではなく、システムを通じてビジネスが新しいオペレーティングモデルを運用できるよう支援することです。
- 適切な階層でオーナーシップを確保する:強力なビジネスオーナーシップがなければ、変革は方向性の決定ではなく交渉の場と化してしまいます。明確な説明責任が、意思決定をローカルな事情ではなく成果に結びつけます。
- ビジネスとITの橋渡しをする:両者がかみ合わなくなったときは、プロセスマップや実際の数値を使った紙のモデルといった明確化のツールを活用します。言葉は解釈の余地がありますが、数字は明快です。
- 感情ではなくデータから始める:計画がうまく機能していないと感じたら、データを確認すべきです。データが間違っていたり、遅れていたり、欠けていたりすると、すべてが崩れるため、まずはデータを整理する必要があります。
- 本番稼働を始まりとして捉える:統合はサイドプロジェクトではなく、オペレーティングモデルの変革です。本番稼働は継続的改善のスタートラインであり、ゴールではありません。
※本記事は、2026年3月に米国で公開された記事の抄訳版です。内容および解釈については英語版が優先されます。
その他、様々なお役立ち情報をこちらに用意しております。併せてご覧ください:/ja/resources
著者について

o9
The Digital Brain Platform
米国ダラスに本拠を置くo9 Solutions(オーナイン・ソリューションズ)は、AIを搭載した次世代サプライチェーンプランニングプラットフォーム『o9デジタルブレイン』を提供しています。多様な業界の大手企業に導入されているo9デジタルブレインは、需要予測や供給計画、統合事業計画など、企業のサプライチェーンDXを強力に支援しています。私たちのミッションは、o9デジタルブレインを通じて、グローバル企業のサプライチェーン、商業、財務、サステナビリティにまつわる意思決定を変革することです。











