いよいよ梅雨が明け、今年も猛暑、酷暑と言われるような季節になりました。筆者が小学生だった約50年前は、ここまで暑くはなかった..と思いながら、無理をしないように日々過ごしております。
さて、暑いと言えば、やはりビールとか、アイスクリームとかでしょうか。筆者自身は食品関連業界で仕事をしたことはないのですが、一般的には、最高気温が20℃を超えると、ビールやアイスクリーム、食品ではないですがエアコンなどが売れ始める、と言われています。更に30℃を超えると、今度はアイスクリームよりも氷菓の方が売れ始める..と聞いたこともあります。また、逆に冬に最低気温が10℃を下回るようになると、ジャケットとかカイロ、鍋用の食品..といった商品が売れ始めるそうです。
ここまで極端な傾向があるビールやアイスクリームでも、人気商品が売り切れ..なんていう状況も時折見られます。商品の需要は、どのように予測されているでしょうか..?
今回は、需要予測について、その基本や仕組み、意味などをお話したく思います。
そもそも、なぜ需要を予測する必要があるのでしょうか..?
やや当たり前ですが、お客様の需要をキチンと満たす商品の手配をするため、というのがその答えです。お客様の需要を満たすことにより顧客満足度は上がり、競合との争いでも優位に立つことができ、ひいては企業の業績も成長・安定します。
ここで重要なのは、リードタイムに関する考え方です。もう少し詳しく説明すると、
- サプライチェーン全体のリードタイム(発注~製造・生産~輸配送~販売)
- お客様が満足して商品を購入して頂けるリードタイム
のそれぞれが、どの程度なのか、というポイントに帰着します。
①の方が②より短ければ、極端な例えをすると、お客様が「欲しい」と言ってから発注しても間に合う..というようなケースであれば、需要予測の必要性は高くはなりません。リスクを負うことなく、お客様の需要にお応えすることができるからです。
ただ、一般的には、①の方が②よりも長く、お客様の需要が詳細に判明する前に、何らかのサプライチェーン活動を起こす必要が発生します。最終製品の製造・生産までのコミットは不要でも、原材料の確保や工場の生産ラインの調整、輸配送の手配などの業務が必要になるケースが殆どです。
そういった事前の発注、手配、確保などの根拠として、「じゃあ何が売れるのか(売れそうなのか)?」という情報が必要になります。商品や業界によっては、共通の部品が多くて予測の変化や変更に柔軟に対応できるケースや、売れると予測される商品そのものでなくても似たような商品で対応できるケース..などがあり、それぞれの企業が置かれた環境によって、どの程度のレベル(粒度)の情報が、どの程度の期間に対して必要なのか、というニーズの詳細は異なりますが、月別の販売予算のようなハイレベルな目標数値..では充分ではありません。
さて、ではもう少し具体的に、需要予測のプロセスを説明してみましょう。
一般的には、計画担当者(企業によってはプランナーと呼ばれます)が、まず過去データや外部要因などを元に、ベースラインとなる予測を作成します。この「ベースライン予測」を作成するためには、社内の過去実績データや外部要因データの整理が必要になります。予測の精度を上げようとすればするほど、これらのデータサイズは大きくなり、いわゆるビッグデータを扱うようなアプリケーションが必要になります。昨今のアプリケーションには、AIやML(機械学習)を活用した分析や予測を提供するものも多くなりました。
また、商品のライフサイクルや新商品発売に際してのカニバリゼーションなど、過去データや外部要因だけでは解決できない要因も考慮しなければなりません。こういったプロセスを経て、計画担当者はいくつかのバージョンの予測を作成し、最終的に最適と思われるバージョンを選択します。
次に、この「ベースライン予測」に、営業やマーケティングからの視点も加えなければなりません。「ベースライン予測」が販売予算を下回っているケースでは、イベントやプロモーション、追加値引きなど、計画差異への対策を検討しなければなりません。商品企画、ファイナンスといったチームからのインプットも反映し、最終的な「コンセンサス予測」として確定させます。この「コンセンサス予測」が、直近のオペレーション計画や、先に述べた「事前の発注、手配、確保などの根拠」となるのです。
では、最後に需要予測の種類、タイプをいくつかご紹介します。
最もベーシックな予測は、マニュアル予測、予測エンジンなどを利用しない、計画担当者の手動での予測です。原始的な方法にも思えますが、統計的な予測が難しいような業界、商品では有効な手法です。
次に挙げられるのは、過去実績を用いた時系列予測です。かなりシンプルな予測手法ですが、需要が比較的安定している業界や、歴史が長く長期間の過去データが入手可能な企業には適しています。
最後は、外部要因やマーケットリサーチのデータなどを活用する方法です。この手法は、長期的な予測や、新しい企業や高成長の業界など過去データに依存できないケースの予測に向いています。
実際には、上で述べたような手法を組み合わせ、様々な時間軸での需要予測を実施します。短期的な予測では、比較的詳細なレベル(商品別や顧客別、日別や週別など)で、直近2~3ヶ月を対象とします。中期的な予測では、直近1年程度までを対象に、もう少し集計されたレベルでの予測を実行します。長期的な予測では、2~3年、時には5年以上先までの市場や業界のトレンドを予測し、企業の商品政策や成長プラン、投資計画といった経営戦略にも大きく影響を与えます。
このように、需要予測は単に商品の直近の販売や需要を予測するだけではなく、在庫や原材料などのリソース、生産や輸配送のキャパシティについて効率的に計画し、長期的な商品開発や投資判断にまで影響を及ぼす、企業にとって非常に重要な計画業務プロセスなのです。
o9ソリューションズでは、これまで述べてきたような様々な予測手法を、お客様の計画業務プロセスに取り込むことが可能です。また、その需要予測をもとに、原材料の調達から輸配送、店頭での販売まで、エンドツーエンドのサプライチェーンを効果的、効率的に計画、管理することが可能になります。
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